【完結】遺族の強い希望により
「自分で読んだ方がいいのね?」

と、玲奈は母に確認した。

母は答えなかった。
恐らくそうして欲しいと思ってはいるのだろう。
だがそれは玲奈のためにではなく、自分の口から言うのに耐えられないからだという負い目が口を重くしているようだった。


母の心労がピークを越えたわけではない。
ただ痛みに慣れて鈍感になっただけで、母もまだ乗り越えられてはいないのだ、と玲奈は解釈した。
母と並び、対等に意見を交わすためには、自分もまた同じ痛みを負わなければならない。

一家の柱を失った。
この家で、もう自分は両親の加護のもとぬくぬくと甘えるだけの子どものままではいられない。
母が弱っているならば、支えるべきは自分しかいない。


「読むよ」

母の返事を待たず、玲奈は決意を込めてそう宣言した。
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