【完結】遺族の強い希望により
玲奈が日記にもう一度目を落としたのは、父や亮は気付かなかったという何かを探すためではない。
ただ母のその顔をこれ以上見たくなかった、それだけだ。


答えを探そうと文字に食い入ったわけではない。
紙面を泳ぐ視線は、並んだアルファベットを文章や単語ではなく、ただの記号の羅列として捉えていた。

それなのに――否、そうだったから、かもしれない。
右側のページの頭にあるものだけが、突然浮き上がって重要な意味のある言葉に見えたのは。

英文の中に埋もれている間はその一部としてほとんど目立っていなかった。
さっきは日記の内容の方にばかり気を取られて、その部分は読み飛ばしたのかもしれない。

だが脳が文字を英文ではなくただの記号と認識した時、日本でも見慣れたその略号だけが主張するように訴えかけてきた。

――『Dec.』


「え? なん――……」

それきり玲奈は、言葉を失った。
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