【完結】遺族の強い希望により
否、そういう問題ではない。
夫は確かに、ジェシカの子が自分の子だと認識していた。
もう一つの家族……そう表現して大事にしていた。
美和子にとっては身を切られるような言葉だったが、それでも、そういう愛情深い人だからこそ自分は隆司を愛したのだ。


生前隆司は、ジェシカに対して昔抱いたような恋情はもうないとはっきり言ってくれた。


『だが家族なんだ。血を分けた親や兄弟や――玲奈と同じように』

その重い現実に耐えられたのは、彼が言ってくれたからだ。

『美和子は、きみだけは、家族であると同時に永遠の恋人だよ』


恋情と、家族の情とは全くの別物だ。
隆司は家族として、オーストラリアのホストファミリーを愛していた。
だから美和子も、彼をオーストラリアへ送り出すことが出来たのだ。
遠い親戚に会いに行くようなものだと言い聞かせて。
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