【完結】遺族の強い希望により
みのりは自分の家を思った。

ごく普通のマンションだ。
目の前の家ほど贅沢ではないが、別段古くも狭くもない。
だがあの家がこの空気を纏ったら、中の人間まで蝕まれそうだ。


――或いは。


もしかするとそのせいで、自分は数ヶ月家に閉じこもってたのではないだろうか。
久しぶりに外に出たというのに、そんな考えに憑りつかれそうになってみのりは頭を振った。

外に出なかったのは自分の意思だ。
目に見えない何かのせいにするなんて、馬鹿げている。


空気が人を蝕んだのではない。
中の、或いはそれを取り囲む周囲の、人間が家の周りの空気を蝕んだ結果がこうなのだ。
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