【完結】遺族の強い希望により
出血についても、今時点では原因の特定が出来ない。
妊娠初期の不正出血は珍しい事ではないから、大袈裟に心配はしない方が良いと医者は言った。

母が言ったのと同じようなことだった。
母体の精神状態が胎児に与える影響を、諭す様な落ち着いた口調で説明された。


出血量が多いし傷みも酷いようだから、流産の可能性はなきにしもあらずだ、とは、みのりが大分落ち着きを取り戻してから告げられた。


だがみのりはこう思った。

――お医者さんもこんなに冷静なんだから、赤ちゃんはきっと大丈夫なんだ。


「我慢できますか? 鎮痛剤は必要ですか?」

医者の問いかけに、みのりは笑って答えた。

「薬ですか? お腹に赤ちゃんがいるのに?」
< 253 / 450 >

この作品をシェア

pagetop