【完結】遺族の強い希望により
ベッドで仰向けになったまま眠れずにいるみのりの元へ様子を見に来た看護士が、気遣って声をかけていった。

不妊治療で通う他の患者のこと。
流産の際に卵巣を取らねばならないケースもあること。
一度流産した後は身体の中が綺麗になるから、正常な妊娠をしやすくなること。

まだこれから先いくらでも妊娠の希望があるみのりの身体が、どれだけ恵まれているかということ。


だが、亮の子どもは二度と授かれないだろう。
看護士の言葉は、気休めにもならなかった。


赤ん坊のためと思えば嬉しくすらあった痛みと出血はその後もだらだらと続いた。
最早苦痛でしかなかった。


この日みのりは、深い闇に堕ちた。
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