【完結】遺族の強い希望により
隣に立っていた男が、みのりに目で合図を寄越してから呼び鈴に手を伸ばした。

半年以上も会っていなかったのに、あの頃と何も変わっていない男の隣に立っているのが恥ずかしかった。


『みのり! 何でライン通じなくなってんだよ!?』


――あの日、真夜中にも関わらず、亮の反応は速かった。

返事があるとすれば当然メールだと思っていたみのりは携帯のバイブレーションに咄嗟に手を伸ばしたが、その瞬間、スピーカーモードにでもなったかと思うほどの大音量が漏れ聞こえた。

焦って取り落とした携帯からは、何事かと心配して大声で呼び続ける亮の声が響く。

そのまま切ってしまおうか、と思ったのはほんの一瞬だった。
ずっと聞きたかった声が、彼女を呼んでいる。
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