【完結】遺族の強い希望により
みのりが先に店から出た。
付き合っている間ならばそういうことはなかった。
いつも亮のタイミングを待ち、亮の後を追いかけるように歩いていた。

――それもいけなかったのかもしれない。


亮に頼って、甘えて、引っ張ってもらうばかりで、強く自己主張をしたことはなかった。

少しのことならば我慢をした。
亮が言っていた通り、無理をしたこともある。
たまに喧嘩になるのは、積もり積もった我慢が限界を超えてみのりが癇癪を起した時だった。
逆に言えば、そんな時しか喧嘩すら出来ない付き合い方だったのかもしれない。

いつもどこかで亮の顔色を窺っていた。
端的に言えば、彼の気にそぐわないことをして嫌われるのが怖かった。

――昔のことだ。


1人で出た外は一段と冷え込んでいて、みのりは店先で立ち竦んだままマフラーを巻き直した。
すぐに亮が出てきて、隣に並ぶと立ち止まる。
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