【完結】遺族の強い希望により
「何故……このような……」


最後に浮かんだ精神病患者という考えが、重ねて美和子を動揺させた。
この少女が、精神を病むほど夫の死にショックを受けるなどということはあり得るのだろうか。


美和子は必死に考えを巡らせた。
この娘の母親が隆司のことを父だと思い込んでいたのなら、この娘も隆司が祖父だと思っていた可能性は濃厚だ。

だが少女が隆司と会えたのはたった2年に一度、クリスマスの時だけのはずだった。
それでも祖父と孫との間に情は生まれたかも知れないが、死なれて精神を病むほどの繋がりが出来るものだろうか。


――まさか。何か他の理由が……。


戸惑いながらも美和子はその異様な入院患者から顔を上げ、ジェシカに向き直った。

そこでふと気付く。
何故娘がこんな状態の時に、彼女の母親――ジェシカの娘はここにいないのか。
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