【完結】遺族の強い希望により
自分だったら考えられないことだった。
どんな理由であれ玲奈がもしもこんな風に病院のベッドに拘束されるようなことになったら、ひと時も傍から離れることなど出来ない。
否、理由如何では、誰に止められようともこの拘束具を解こうとするに違いなかった。


「あの、この子のご両親は……」

咎める感情は極力表に出さないように気を付けたつもりだが、それでも不信感は顔に出ていたかもしれない。
ジェシカは目を逸らすように伏せると、横たわる孫娘に元通りに毛布を掛けた。


「申し訳ありません。この子の母親もあなたに会って話したいと申しましたが、私が追い払いました。彼女の夫に頼んで、力づくで家へ帰しました」

言い終えて顔を上げたジェシカから真っ直ぐに目を見られた時、美和子の身体に震えが走った。
ジェシカの光のない目は、まるで空洞のようだった。


「娘にも孫にも聞かせるわけにはいかない――。私1人であなたと会い、全てをお話しさせていただくために」
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