【完結】遺族の強い希望により
外務省という日常生活では聞き慣れない先から、夫の死の報せを受けたのは朝だった。
時差や連絡が来るまでにかかった時間等考えれば、実際に事故が起こったのはかなり早朝ということになる。

すぐに荷物をまとめて家を飛び出し、病院に着いた時には既に夕方。
それでも幸運と呼んで良いほど素早い到着だった。
キャンセル待ちの航空券を優先的に回すよう、在外公館職員が尽力して先に手をまわしておいてくれたおかげでもある。

美和子はその在外公館等にも世話になりながら、わけの分からぬままに事務的に動き続けなければならなかった。


加えて隆司は公務出張という名目で渡航していたために、勤務先の学校側からは報道に対しても説明義務が生じるらしかった。

まだ詳しい事が何も分かっていないのに、ましてやジェシカが知っている真相とやらも知らぬままに迂闊なことは言えない。
学校側には既知の事実のみを伝え、詳細は追ってと適当に誤魔化したつもりだった。

だが、真相を聞かされた後に、詳細を公にすることなど出来ないのではないか――そんな不安も、その時既に美和子の中に存在していた。
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