【完結】遺族の強い希望により
もしも産んだ後で気持ちが離れたとすれば、ジェシカにはいくらでも次のパートナーと巡り合う機会があった。
未だに母が独りでいるのは、離れていても隆司を愛し、そして愛されているからに違いない。

そしてそうでなければ、今になってこうして自分と引き合わせられるはずがない――。
２人は出会った若かりし頃から今でもずっと、愛し合っている。


では日本の家族とやらは一体何なのか。
大方隆司の両親にでも宛がわれた、偽りの妻なのだろう。
結婚から既に数年経っているらしいが、未だ子どももいないというのだから夫婦生活すらないに違いない。

そう考えたエラは、日本にいる隆司の妻のことを気にも留めなかった。


隆司は初めて会った自分のことを、娘として愛してくれている。
婚約相手を紹介した時にも、父親らしく彼を迎え入れ、彼と自分が幸せな家庭を築けるようにと沢山の助言や愛情をくれた。

間違いない。
彼にとって本当の家族はこちら側で、日本に残してきているのは偽物の家族だ。
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