【完結】遺族の強い希望により
エラ夫妻は、産まれてきた娘にクロエと名付けた。

未だにジェシカからは明言されていないにも拘らず、祝いに駆けつけた隆司を産まれた赤ん坊の『お祖父様』と公言することに何の躊躇いもなかった。


隆司はそれから欠かすことなく、2年に一度の頻度でクリスマスをこちらの家族と過ごしにやってくるようになる。

その口実にするためだけにオーストラリアでの仕事を作った彼が、日本よりもこちらの家族を優先してくれていることは最早疑いようもなかった。


本当は彼はずっとこちらにいたいのだ。
それなのに、日本が彼を抱え込んだまま、解放してくれない。
私たち家族の邪魔をするな、隆司を返せ。
エラの恨みは、年を追うごとに募っていった。


ジェシカも隆司もクロエに血縁関係を告げようとはしなかったが、エラは隆司がやってくる度に娘に言って聞かせた。
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