【完結】遺族の強い希望により
玲奈は静かに人差し指を唇の前に立てた。
乾燥して裂けた血が乾いた跡の様な筋が、その唇に1本走っている。


「母が寝ているの」


低い低い静かな声で、玲奈がはじめて喋った。
その声は、地の底から伸びてきた手に突然足首を掴まれたような恐ろしさを感じさせる。

――引きずり込まれる。

とても声など出せそうになかったみのりは、小刻みに首を縦に振ることでなんとか了解の意思を返した。
< 32 / 450 >

この作品をシェア

pagetop