【完結】遺族の強い希望により
ジェシカは分かっているのだ、自分が撒いた種の罪の大きさを。
本当は今からでも、娘や孫たちに真実を伝えるべきなのだということも。

そして恐らく、そうしてしまえるのならば、その方が彼女の心は少しは楽になるのだろう。

彼女が案じているのは、真実を知った後の子どもたちの心――ただそれだけ。
自分の保身のためなどでは、なかった。
隠すことで、彼女が守りたいのは彼女自身ではなく、彼女の娘たちなのだ。


「あなたは……」

冷静にならねば、と頭では思っても、速い鼓動が治まらないどころかその音まで耳に聞こえてくる。

真実を知った後、エラとクロエはどうなるのか。
その問いに対する答えを、出すことを躊躇った。
考えたくもなかった。

目の前にひれ伏しているのがもしも自分の保身を優先させるような女ならば、元はと言えば自分のせいじゃないか、と罵倒することも出来たのに。
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