【完結】遺族の強い希望により
エラもクロエも、肉親と信じてきた隆司と血の繋がりがないことを知れば、それだけでもきっと相当のショックを受けるに違いない。

そしてこれは最早、誤解を正せばそれで済むような簡単な問題ではなかった。
何故なら彼は――隆司は、死んでしまったのだから。


「あなたはそれを隠したまま……」

ジェシカはこの先、ずっと本当のことを隠したまま生き続けるつもりなのか。
自分のためでも、隆司を繋ぎとめるためでも、現実から目を背け甘い夢の中で過ごすためでもなく。

「ずっとおひとりで、その秘密を抱えていくおつもりなんですか」

――秘密を……罪を、ひとりで抱えたまま。


「ですから……」

と、ジェシカは呟くように言った。

「私だけを責めて、私だけを、恨んでは下さいませんか」

それが、美和子の質問に対する答えだった。
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