【完結】遺族の強い希望により
玲奈は必要以上にドアを開こうとせずに、踵を返して家の奥へと戻っていく。
閉まりかけたドアに慌てて手をかけた亮が、不安に縮こまるみのりへと目配せをする。

『大丈夫か? 入るぞ』

その声が聞こえたようだった。


勘違いしそうだ。
亮は今日、自分を支えるためにここへ来たわけではない。
今支えを必要としているのは玲奈の方だ。
決して自分ではない。


意を決し、家の中へと踏み入れた。
玲奈は自室へ向かうつもりか、既に階段の真ん中あたりまで上っている。
その影を背負った後ろ姿を見上げながら、隣にいる亮への意思表示としてひとつ頷いて見せた。


「――ッ!」
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