【完結】遺族の強い希望により
真実を告げない、ということは、理不尽に憎まれ続けるということだ。
夫を殺した少女にも、その原因を作った母親にも、愛のない結婚で夫を騙し囲い込んでいた卑劣な女と誤解されたまま。

突然夫を奪われて、弁明も謝罪も受けられないどころか。


心臓が激しく脈動を刻み、血液は沸騰したようにめまぐるしく暴れながら循環した。
頭に上っているのか、酷く頭痛がする。
寝ていないからか、否、そうではない。
ただ考えることを脳が拒否した。


――そうだ、たった一瞬だけでいい。一旦全部忘れよう……。

そう決めた美和子は、床に跪いたままのジェシカにも、もう目もくれなかった。

淡々と備え付けのミニポットの中の冷めた湯を捨て、ペットボトルからミネラルウォーターを注ぐと再び電源を入れる。
灯った赤いランプをじっと見つめている内に、ポットはことことと音を立て始めた。
< 331 / 450 >

この作品をシェア

pagetop