【完結】遺族の強い希望により
湯を沸かし、コーヒーを淹れる。
たったそれだけの作業が、いつの間にか、いくらか美和子を冷静にしていた。


土下座なんて日本ですら実生活上では見ることもない。
時代劇や、ドラマや映画の世界の中だけの大袈裟な演出だ。
目の前でしかも外国人が、自分に対してそれをするのはやはり違和感がある。

ジェシカが見せた精一杯の誠意であり必死の懇願なのだろうが、冷静になった今、その姿は場違いな笑いを誘った。


「あなた、いつまでそうやってるんですか。もういいですから、どうぞ椅子に」

笑いながらそう言った。
決して馬鹿にしたつもりではないが、本当に可笑しくなってきてしまったのだ。

けれどジェシカは、それでもすぐには立ち上がろうとしなかった。


「まだ……まだ、お許しをいただけておりません」

その言葉に、ぴくりと美和子の右の眉が反応した。
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