【完結】遺族の強い希望により
ジェシカは何も言えなくなったのか、そのまま黙り込んだ。

コーヒーを飲むか、という問いにも当然返事はなかったが、美和子は淹れ直したコーヒーをテーブルに置いた。
今度は自分の分もある。
カップを持って、初めて美和子はテーブルに着いた。


「ほら座って、飲んでくださいよ温かい内に」


難しく考えることなどなかった。
許さなくて良いのだ、その必要はない。

この先ジェシカは、例えエラやクロエが自分に接触しようとしても、何としてもそれを食い止めるだろう。
顔を合わせれば、こちらも黙っているつもりはない。

だが会わない限り、2人がどれだけ自分を筋違いに憎んでいようとも、こちらに火の粉が降りかかって来ることは万にひとつもないのだ。

自分も遠い海の向こうから、この家族が重ねてきた罪を、そっと恨んでいれば良い。
決して交わることのない、二度と関わることのない遥か遠くから。

いつか自然に忘れることが出来るかもしれない――訪れるかどうかも分からないその日まで、ずっと。


許さない、だがその代わりに、2人に真実を告げろとジェシカに強要することはしない。
それが、美和子が出した結論だった。
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