【完結】遺族の強い希望により
――オーストラリアには、死刑制度はなかったかしら。
そんなことを、美和子はぼんやりと考えていた。
遺族は犯人を死刑にしろと声高に叫ぶ。
首に輪をかけろ、足元の台を抜けと。
だがいざ自分が執行官になった時、処刑ボタンを躊躇せずに押せる人はどれだけいるのだろう。
美和子には出来なかった。
真実を告げることで、少なくとも夫を死に追いやった張本人は壊せるかもしれない。
だがどれだけ相手を恨み壊れてしまえば良いと望んでも、目の前にボタンを置かれると手は震えた。
クロエやエラに本当のことを話せとか会わせろと強要しないのは――出来ないのは、相手に与えた慈悲などではない。
ただ自分が、臆病で卑怯だからに過ぎないのだろう。
殺してやりたい、とすら思っていたはずの目の前の女を見た。
「――家族に一生隠し事し続けなきゃいけないなんて、あなたの残りの人生も可哀相ね」
自然と零れた言葉には、皮肉と同情が入り混じっていた。
執行ボタンを押すことを躊躇った自分がジェシカに与えられる、それが唯一の報復――罰だった。
そんなことを、美和子はぼんやりと考えていた。
遺族は犯人を死刑にしろと声高に叫ぶ。
首に輪をかけろ、足元の台を抜けと。
だがいざ自分が執行官になった時、処刑ボタンを躊躇せずに押せる人はどれだけいるのだろう。
美和子には出来なかった。
真実を告げることで、少なくとも夫を死に追いやった張本人は壊せるかもしれない。
だがどれだけ相手を恨み壊れてしまえば良いと望んでも、目の前にボタンを置かれると手は震えた。
クロエやエラに本当のことを話せとか会わせろと強要しないのは――出来ないのは、相手に与えた慈悲などではない。
ただ自分が、臆病で卑怯だからに過ぎないのだろう。
殺してやりたい、とすら思っていたはずの目の前の女を見た。
「――家族に一生隠し事し続けなきゃいけないなんて、あなたの残りの人生も可哀相ね」
自然と零れた言葉には、皮肉と同情が入り混じっていた。
執行ボタンを押すことを躊躇った自分がジェシカに与えられる、それが唯一の報復――罰だった。