【完結】遺族の強い希望により
ジェシカは美和子の言葉を静かに受け止めるように目を瞑り、ゆっくりとひと口、ふた口コーヒーを飲み下した。
それからもう一度、今度は椅子に掛けたままの状態で頭を下げる。

「――本当に、ありがとうございます」

「……だから、許したわけではありませんってば」


おかしな茶会だった。
同じ男を愛した女が2人、互いに異なる苦しみを抱きながら、しかし何かが共鳴していた。
彼女も同じ喪失感の中にいて、同じように彼を悼んでいるのだと気が付いた時、不思議と憎しみは少しだけ薄らいだような気がした。


「あんまり美味しくないコーヒーね」

ふと、他愛の無い話でもしてみたくなった。
だが思い浮かんだことをそのまま口にしてみて、弾むはずのない話題に自分で苦笑した。

「豆をお持ちすれば良かったです」

と、思いがけず答えが返ってくる。

コーヒーに何か拘りでもあるのだろうか――そう考えて、すぐに思い当たることがあった。
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