【完結】遺族の強い希望により
危うく大きな声をあげそうになったみのりはその時、ひりついた喉が声を取り戻したことに気が付いた。

錆び付いたロボットのようにぎこちなかった身体中の動きに、潤滑油を差されたように自由が戻る。


右手に確かに感じる、熱。
無言で繋がれたその手を、亮が静かに引く。

場所を、立場を、ここへ来た目的を忘れそうだった。
こみ上げてきそうになる涙を瞑目して堪え、亮に手を引かれたまま、みのりは玲奈の後を追った。


当然のように、部屋に入る前にその手は離れていく。

――亮はもう、私のものじゃないんだから。

こんな風に亮に頼ったり甘えたりしてはいけない、と、みのりは自分に強く言い聞かせた。
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