【完結】遺族の強い希望により
夫は挽き立てのコーヒーを好んで飲む人だった。
ジェシカが元々同じ嗜好だったかどうかは分からないが、きっと彼のために、この女はとっておきの豆を挽いたのだろう。
何故だか、嫉妬は起こらなかった。
言葉の端に同じ相手との思い出を共有したことが、僅かにだが、2人の距離を縮めたような気がしていた。
「手続きが済んだら、すぐに日本に帰るわ。……きっともう二度と、お会いすることはないでしょう」
暗にエラにもクロエにも会うつもりはないと示せば、ジェシカは申し訳なさそうに歪めた顔に薄っすらと安堵の色を滲ませた。
「最後に……お渡ししなければ、ならないものが」
ジェシカがそれを取り出したのは、本当に部屋を出る直前の去り際である。
出されたのは、場の雰囲気にそぐわないやたらと派手な菓子の缶だった。
だが開封した形跡があり、中身が菓子ではないのはひと目で分かった。
ジェシカが元々同じ嗜好だったかどうかは分からないが、きっと彼のために、この女はとっておきの豆を挽いたのだろう。
何故だか、嫉妬は起こらなかった。
言葉の端に同じ相手との思い出を共有したことが、僅かにだが、2人の距離を縮めたような気がしていた。
「手続きが済んだら、すぐに日本に帰るわ。……きっともう二度と、お会いすることはないでしょう」
暗にエラにもクロエにも会うつもりはないと示せば、ジェシカは申し訳なさそうに歪めた顔に薄っすらと安堵の色を滲ませた。
「最後に……お渡ししなければ、ならないものが」
ジェシカがそれを取り出したのは、本当に部屋を出る直前の去り際である。
出されたのは、場の雰囲気にそぐわないやたらと派手な菓子の缶だった。
だが開封した形跡があり、中身が菓子ではないのはひと目で分かった。