【完結】遺族の強い希望により
返事をするよりも早く、亮は立ち上がり手を差し伸べていた。
「外に出たのは何か月ぶり? 家の人、これ以上遅くなったら心配するだろう」
労わり気遣ってそう言ってくれているのは分かる。
分かるのだが、みのりは恐怖に襲われた。
玲奈の家を出た後に、母に電話をした――あの時、亮の名前を出すことが出来なかった。
彼が流れた子どもの父親だと知っている母に、その名を聞かせることが出来なかった。
母は、みのりが彼と会っていたことを知ったらどう思うのだろう。
このまま家に戻ったら、もしも亮と一緒にいたことが知られたら、自分はもう二度とあの家から出ることが出来なくなるのではないか――。
自分の意思で家に籠っていた日々とは全く異なる、何か別のものに捕らえられるのではないか。
「外に出たのは何か月ぶり? 家の人、これ以上遅くなったら心配するだろう」
労わり気遣ってそう言ってくれているのは分かる。
分かるのだが、みのりは恐怖に襲われた。
玲奈の家を出た後に、母に電話をした――あの時、亮の名前を出すことが出来なかった。
彼が流れた子どもの父親だと知っている母に、その名を聞かせることが出来なかった。
母は、みのりが彼と会っていたことを知ったらどう思うのだろう。
このまま家に戻ったら、もしも亮と一緒にいたことが知られたら、自分はもう二度とあの家から出ることが出来なくなるのではないか――。
自分の意思で家に籠っていた日々とは全く異なる、何か別のものに捕らえられるのではないか。