【完結】遺族の強い希望により
「……ごめんね、せっかく来てくれたのに、お客様を迎える準備も出来てなくて」


自室へ戻ったからか、玲奈の雰囲気は玄関で見た時よりも幾分か和らいでいた。

苦笑しながら自分のことを「酷い有様でしょう」と言う彼女は、僅かにだが、みのりの良く知る玲奈に戻ったようにも感じられる。


「大変だったね……玲奈」

言って、みのりは彼女を抱きしめる。

途端感情を取り戻したかのように、玲奈の肩が震えだした。


「ごめん――泣いても、いいかな」

律儀に断りを入れるところが彼女らしかった。
そして玲奈はその言葉の通り、みのりの腕の中で声をあげて泣いた。
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