【完結】遺族の強い希望により
「お母さん、あの時何にも説明しないで電話すぐに切っちゃったものね」

敢えてわざと口を尖らせ、非難するような口調で玲奈は言った。

母は苦笑し重ねて「ごめんね」と謝り、玲奈はそれを受け、おどけるように肩を竦める。
気にしないでと言葉にする代わりにそのやり取りが娘の気持ちを母に伝え、母の心も少しは軽くなったようだった。


最後の手紙――父が母に宛てたという、今は玲奈の手元にあるその手紙の内容を残したままだった。

だが母は、長く話し疲れているだろう。
玲奈もあまりのことの連続に、ショックを通り越して、まるで他人事のようにぼんやりとしか聞かされたことを受け止めきれていなかった。
休憩が必要だ。


「お母さん、何か飲む?」

「そうね……甘いものがいいな。ココアあったかしら」

娘に気遣ってかあまり見せないようにはしているが、やはり母も相当疲れているようだ、と、その珍しい選択に少しだけ心が痛んだ。
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