【完結】遺族の強い希望により
「ジェシカから全て話を聞き終えた時には、許さない、と思っていたわ。一生憎み続けると思ってた。何もするわけじゃなくて、ただずっと心の中でね。それで良いじゃない。仕返しに何か嫌がらせするでもなしに、心の中ならどう思おうと自由だもの」

うん、と、玲奈はひとつ相槌を入れる。

誰かを恨むとか憎むとか、正直な醜い感情を母の口からはっきりと聞かされるのは初めてだ。
不思議と恐怖も嫌悪感もないのは、母の中でその感情が既に凪いでいることが分かっているからだった。

「でも、これ読んだらね……」

と、母は静かに目を瞑る。
その穏やかな表情は、微笑んだ様にも見えた。


「お父さんは向こうの人たちのことを最後まで家族と呼んでいたけれど、私は彼女たちへ向けたこんな手紙を預かってない。それが全てじゃない? 血が繋がっているとかいないの問題じゃなく、本当に家族としてお父さんが愛してくれていたのは私たちだけ……そう信じられた。だからかな。もういいやって、思えちゃった」
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