【完結】遺族の強い希望により
言いながらみのりが差し出した洋菓子店の箱の中には、種類の異なるゼリーやプリンが5つ入っている。

玲奈の父へ供える用として選んだ『甘くないもの』はコーヒーゼリーだ。
残りはプレーンなカスタードと抹茶のプリンに、冬限定で売り出されていた苺と蜜柑のゼリー。

箱を開けて上から覗いた玲奈の母は、「まあ」と顔を綻ばせた。

「もしかして、おばさんも貰っていいのかしら」

「もちろん!」

「嬉しい。じゃ、せっかくだから一緒に下で食べて行って? お茶用意するから、その間にお父さんにあげておいてもらっていいかしら」

「はい!」


張り切って返事をするみのりのことを、今度は亮がくつくつと笑いながら「だから言ったろ?」と肘で突いた。

「何? どうしたの?」

と横から覗きこんだ玲奈に、亮が説明する。

「や、みのりがさ。手土産自分で持って行って自分で食べるのは変じゃないかって、来る途中ずっと気にしてたんだよ」

それを聞いて、玲奈も笑い出した。

「今さら! こないだのドーナツだって自分で持ってきて自分で食べたじゃない」
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