【完結】遺族の強い希望により
高嶋隆司の遺影の隣に、代表して亮がコーヒーゼリーを供えた。

「きっと喜んでる。コーヒーがとても好きだったのよ、父は」

玲奈が今日は一緒に線香をあげるのを見て、みのりはほっとした。


まだあの日あの後母娘でどんな話をして、玲奈の中で父親の件がどう解決したのかは聞いていない。
ただ『もう大丈夫』という短い報告を貰っていただけだった。

多少の心配が残っていたが、玲奈が父親の遺影ときちんと向き合って手を合わせられるようになっているのを見ただけで、本当にもう大丈夫なのだと確信することが出来た。


「さあ、いただきましょう。誰がどれ? 早い者勝ちよ」

テーブルにお茶の用意をした玲奈の母が呼びかけてくる。
あの人ももう大丈夫なのだ、そう思うと嬉しかった。

ふと、『他人』の感情を一緒に喜べるようになっている自分に気付いた。
死んだように引きこもって周りへの興味を失っていた頃の自分では、もうないのだ。
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