【完結】遺族の強い希望により
台風のような勢いで食べ終えてしまったみのりと玲奈に急かされ、亮はまだ器に残っていたプリンを慌てて掻きこんだ。

「早く2階に行こう。亮の武勇伝聞かせて!」

と逸早く立ち上がった玲奈がはしゃいでいる。
否、亮の顔の痣をからかっているのだろう。

「武勇伝なんかじゃねえ」

苦笑しながら、玲奈に続いて亮が席を立った。


空になった揃いの器がテーブルに残っている。
下げるのを手伝った方が良いのだろうか、と、みのりは一瞬出遅れた。
娘の玲奈がさっさと部屋に行こうと言っているのに、自分が『手伝います』と言い出すのも出過ぎているかもしれない。

大人のしきたりとかマナーとか、やはり自分にはまだ難しい。
場慣れすれば自然と状況判断できるようになるものだろうか。


様子を窺っていると、玲奈の母は器をひとつ照明に透かすように掲げて「綺麗」と呟いた。

「これ、貰っちゃっていいのかしら」
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