【完結】遺族の強い希望により
「……席に」
みのりの父が重たい口を開いて、自分の席からテーブルの横へ移動していた亮たち父子を、あるべき場所に座らせた。
「お話を、どうぞ」
促したのはみのりの母だ。
彼女は言葉足らずな夫の発言を補うように時折そうやって喋った。
双方どちらかの家ではなく、小料理屋の個室をとって顔を合わせていた。
まるで見合いの席のようだ。
父が息子に拳を振ったり、息子が血を流したりしていなければだが。
廣岡家の方が準備した場だった。
正式に謝罪と今後の話をさせてもらいたいという願い出に、佐伯家が応えた。
みのりの父は渋々といった様子を隠そうとしない。
そう振る舞っているのが本心なのかわざとなのかは、娘のみのりにも読めなかった。
母なら或いは、父の本音が分かっているのかも知れないが。
大きな音を立てても、店の者は誰も邪魔をしにこなかった。
料理も運ばれてこないところを見ると、事前に話を通してあったのかもしれない。
みのりの父が重たい口を開いて、自分の席からテーブルの横へ移動していた亮たち父子を、あるべき場所に座らせた。
「お話を、どうぞ」
促したのはみのりの母だ。
彼女は言葉足らずな夫の発言を補うように時折そうやって喋った。
双方どちらかの家ではなく、小料理屋の個室をとって顔を合わせていた。
まるで見合いの席のようだ。
父が息子に拳を振ったり、息子が血を流したりしていなければだが。
廣岡家の方が準備した場だった。
正式に謝罪と今後の話をさせてもらいたいという願い出に、佐伯家が応えた。
みのりの父は渋々といった様子を隠そうとしない。
そう振る舞っているのが本心なのかわざとなのかは、娘のみのりにも読めなかった。
母なら或いは、父の本音が分かっているのかも知れないが。
大きな音を立てても、店の者は誰も邪魔をしにこなかった。
料理も運ばれてこないところを見ると、事前に話を通してあったのかもしれない。