【完結】遺族の強い希望により
「戒名をいただき経をあげてもらいます。廣岡家の墓に、2人の子があったことを刻みたい」


――亮の家の、お墓に。

黙って聞いていたみのりは、その言葉に涙を落とした。
若い2人の過ちを、亮の両親はどれだけ真剣に考えてくれたのか。


廣岡家は、そこで揃って頭を下げた。

「息子が言い出したことです」

と、父親が補足する。

「馬鹿なりに考えたのでしょう。そうさせてもらいたいと」

「……お願いします」

静かに震える声は、亮の母親のものだった。


「墓に、だと。どういう意味か分かって言ってるのか。娘の子だ、佐伯の血筋だぞ!」

父が声を荒げて立ち上がりかけるのを、母が隣からそっと制した。

「本当にその意味が分かった上で、仰られているのですか」

父と同じことを言っている。
だが口調は丁寧で、落ち着いていた。
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