【完結】遺族の強い希望により
亮の父親はゆっくりと顔を上げて姿勢を正した。
遅れて、亮と母親も直る。

父は息子の目をじっと見つめて何かを確認した後、その視線をみのりに移した。
みのりは瞬きもせずにそれを見つめ返し、それから瞑目して小さく頭を下げた。

長い沈黙を置いた後に、亮の父親は微かに息を吐いて再び口を開いた。


「子どもたちの気持ちを聞きました。彼らは――愚息だけでなく、お嬢さんも、本気でそれを望んでいるように私には思えました」

みのりの父が膝の上で握りしめている拳が、ぴくりと反応した。
だが発言の邪魔をすることはなく、黙って成り行きを待っているようだ。


「亮」と息子に呼びかける。

「まだ言葉にはしたことがないのか」

この場でそんなことを聞かれたことに狼狽えて、亮は目まぐるしく視線を泳がせた。

「しっかりしないか。口にするんだ、今ここで、皆さんの前ではっきりと。みのりさんにも、ご両親にもだ」
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