【完結】遺族の強い希望により
まさか、と思った。
2人の子の存在を、亮の家の墓に刻むことの意味――静かにやり取りを聞いているだけのみのりだが、その意味に全く思い当たらないわけではない。
だがまさか、今日こんな展開になろうとは全く予想をしていなかった。


亮が席を立って、佐伯家が並ぶ側に移動しそこに正座をし直した。
心の準備も言葉を用意する間も与えられなかったのだ、大した口上を述べられるはずもない。

だが彼はその場で一度礼をし、みのりとみのりの両親へ向け、しっかりと顔を上げて話した。


「自分はまだ学生の身です。馬鹿なことをしてみのりさんを傷付けた。ご両親からしたら頼りないどころか、顔も見たくないとお思いでしょうが――、」

すう、とそこで、亮は自分を落ち着かせるように呼吸を入れた。

両手で口元を隠して目を見開いているみのりの方へ、ちらりと視線が走った。
声にまで現れていた震えがぴたりと止まる。

「気持ちは確かです。もう二度と揺らがない。お願いです、今すぐにとは言えないけれど、いずれ必ず」
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