【完結】遺族の強い希望により
父が吐いた深く長い溜め息には、苛立ちやら呆れやら諦めやら、複雑な感情が入り混じっていた。

「あーあ」と、場にそぐわない妙に気の抜けた声を出したのはみのりの母である。


「本当によろしいんです? まだこの子には、何にも教えてないんですよ。お料理もお掃除も洗濯も、家のことなんかロクに出来ませんよ。その上この年で引きこもり。学も職もないただの穀潰しなんですから」


慌てたのはみのりだ。
咄嗟に身体の向きを亮の両親の方へ変えると、「これからちゃんとします!」と頭を下げ直した。


亮はみのりの母親の言葉に、驚きを隠しきれていなかった。
だが彼女に向けて、しっかりとした口調でこう言った。


「美味いお茶の淹れ方を、あなたは彼女に教えてくれました――」
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