【完結】遺族の強い希望により
「――父は」


優しい人だった、と、玲奈は掠れた声で話し出す。
常に正しい人だった。
だから叱る時は厳しく、けれどそれすらも愛に溢れていて、信頼していた、大好きだったと。


高嶋玲奈の両親は8つ歳の離れた夫婦で、母親が出産時30歳、父は38歳。
父にとっては玲奈は遅い子どもだった。

そのせいか普段の可愛がり様は玲奈自身でも過剰と分かるほどで、しかし教育者としての性分がそうさせるのか、ただ甘やかすだけではなく父は躾けるべき部分はきちんと厳しく教えてもくれる。

母親もそんな父を信頼し尊敬していたし、2人は娘の目から見ても、とても仲の良い夫婦だった――。


「……うん、なんか分かるな」

と、亮が相槌を入れる。
みのりも同意だった。
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