【完結】遺族の強い希望により
そんなわけがない、といくら否定したところで、では何故母は事実を隠したかったのかと考えれば辻褄が合ってしまう。
主観抜きで情報だけを見れば、納得出来てしまった。

気持ち悪い。
それが最初に湧いた感情だった。


長年高校教師として勤めてきた父だ、今は学校長という立場もある。
ずっと女子生徒に対してそういう目を向けてきていたのだろうか。
玲奈に対する溺愛ぶりは正常の域だっただろうか。

考えるほどに嫌悪感と憎悪が募った。

しかし家の中には至る所に父の気配が残っていて、空気が、記憶が、思い出が、生まれた時から見てきた父の姿がそれを打ち消そうとせめぎ合った。


ただでさえ喪失感で弱っていた心のバランスは簡単に崩れていく。
気が触れるか触れないかという瀬戸際で、漸く母親からの連絡が入った。
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