【完結】遺族の強い希望により
母は力なく、ただ帰国の日程だけを伝えてきた。
死因を公表しないせいでどんな風に言われているのかを、まだ知らないようだった。


『お母さん、病院に運ばれたのはお父さんだけじゃなかったって本当なの?』

『……それ、誰に聞いたの?』

『ねえ、その子って』

『大丈夫、助かったわ。お父さんが助けたのよ』


意味が分からなかった。

その子は一体誰なんだと聞きたかったはずなのに、それを遮るように的外れなことを言うと、母は逃げるように電話を切ってしまった。

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