【完結】遺族の強い希望により
一体自分は何を見ているのだろう。
目の前で泣きながら暴れているのは、本当に自分が知る高嶋玲奈か。

未知のものを目前にして、みのりは恐怖で全身が粟立つのを感じた。
突き飛ばされたショックでも彼女の変わり様に対する驚きでもない。
ただ恐ろしかった。

落ち込み傷付いて暗く淀んだ空気を纏っていた、今日最初に見た時の彼女の方がまだマシだった。
別人のようにやつれ変わり果ててはいても、あれはまだ玲奈だった。


――この子は一体、誰なの……。


亮は玲奈を止めようとしながらも、突き飛ばされたまま動かないみのりの様子をちらりと窺ってきた。
大丈夫か、というアイコンタクトが飛ばされたのを視界の端で確認はしたが、何も返すことが出来ない。

苦々しそうに顔を歪ませた彼から、小さく舌打ちが漏れた。
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