【完結】bitter step!
クッションを投げ合いながら、臭う臭わないとか、漫画の表紙が折れた折れないと言い合っている内に、あまりにも騒いだせいか母さんが様子を見に来た。


めずらしくオレンジジュースの差し入れを持って来た母には思惑がある。
……分かりやすい。


「純平くん、夕飯食べてく?」

「あーいや、家で用意してると思うんで、いいっス」

夕飯の誘いを純平に断られた母さんは、今度はボクに向き直った。


ほら来た。
夕飯に誘ったのは断られること前提の前振りで、母さんの本当の思惑はこっちだ。
何が楽しいのか知らないが、にやけた顔が我が母ながらキモい。

「なお、おやつ持ってこようか?」


――それはきっと、さっき持って帰ってきたクッキーを指している。


「いいよ別に」

無下に断ると、母さんはあからさまに落胆を顔に出した。

何がしたいんだこの人は。
ボクが菓子作りなんかしたって純平にバラして、一緒に笑うつもりか。


でも、美紗が言ってたから。
14日の楽しみがうんぬんって。

だから純平には、まだ秘密だ。
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