【完結】bitter step!
携帯のメモリを手繰り発信ボタンを押したのは、別に先輩の声を聞きたいとか話したいとかいう甘ったるい気持ちが生まれたからじゃない。

ましてや、お土産をいただくお礼代わりに声を聞かせて喜ばせてやろうなんていう、傲慢でもない(少なくともボク自身には、そんな気持ちはない)。


ただ自分を嫌いなままでいたくない――、

そんな、自分勝手な感情がボクを動かした。


耳に当てた携帯から、機械的にコール音が響く。

1回、2回――……、8回。


長すぎるコールの後にプツッと通話状態に変わったことを知らせる短音がして、次に待っていた応答の声の代わりにガサガサした雑音と、少し遠めの『――がとうございました』という女性の声が聞こえた。

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