【完結】bitter step!
エラい形相でボクに近寄って、響先輩は両肩を掴んだ。

「何があった?一体誰がこんな……ッ」


あまりの剣幕と、はじめて見る怖い顔をした先輩に、情けないことにボクは動けなくなった。
おまけに、冷静さを欠いた先輩の力は思いの外強くて、両肩がジンジン痛い。


違う、誤解、別に怪我なんてしてない。
言ってしまえば笑い話なのに、声が出ない。


なんとか助けを求めようと後ろを振り返ろうとするボクの視界が捉えたのは、自分の右肩とそれを掴む先輩の左腕だ。

そこに、もう1本の腕が凄い勢いで侵入してきた。


「なーに熱くなっちゃってんすか、先輩」

「じゅん、ぺ……」


右肩が解放されたことに気が緩んだのもほんの束の間だった。

笑いながら純平が先輩の腕を捻りあげているのを見て、さらに背筋に冷たい汗が伝うのを感じる。
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