【完結】bitter step!
唐突によみがえったのは、嫌な思い出だった。


砂場にそそり立つ、タイヤで出来た恐竜のモニュメント。
あんな怖い事件もあったけど。

記憶を再び倉庫に戻すのには、どれくらい時間がかかるのだろう。
その時間を待つよりも、新しい記憶に塗り替えた方が、きっと早い。


「純平」

「おう?」

「……恐竜のぼろっか」


楽しい思い出に、塗り替えてしまえばいい。
ボクが誘うと、純平は少し怪訝そうな顔をした。


「なんだよ、いきなり」

「競争しようよ。昔、よくやったじゃん」

「……負けねぇよ?」

「ははっ!ボク、純平に負けたことないよ」


……昔は、ね。
きっと、今やったら、ボクが負けるんだ。
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