【完結】bitter step!
ソレに気付いたのが――、


近すぎる距離のせいなのか、
暗闇でいつもよりはっきり感じられる呼吸のせいなのか、
それともさっきの記憶の欠片のせいなのか、

ボクには分からない。


だけど、ボクにははっきりと伝わった。
純平が、何かに脅えているのが。


「純平……。何が、不安なの?」


正直、『テストに決まってんだろ』とか言って欲しかった。
そうだ、ボクらがここに来たのは元々、そういう共通する不安からの現実逃避だったはずだ。


だけど彼は、ボクの問いかけにピクリと一瞬体で反応したきり、言葉にしてはくれない。
その沈黙が、彼が抱える不安材料が学年末テストではないことを物語っている。


ボクからの質問を待っているのだとしたら――……



本当に、純平は狡いよ。


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