【完結】bitter step!
あの抱擁に、甘ったるい意味や色気は全くなかった。

震える手を包んでいた両手を放して背中に回した時、純平はピクリとも動かずに、ただボクの肩に顔を埋めた。


ようやく震えが止まって彼が顔を上げた時、暗闇に慣れた視界の先ほんの数センチの距離で、ボクと純平の視線が絡まった。


『お前……ホント、女にしとくの勿体ねぇな』

『感謝しろよ。いい友達持ったって』


いつも通りに笑った。
でもそれは、お互いに、いつもより少しだけ弱々しかった。


彼の言葉に、痛みを感じなかったわけではない。
もしもボクが男に生まれていたら、もっと違う形のボクらがあっただろうに、とも思う。

けれどボクのそんなちっぽけな悩みなんてどうでも良くなるくらいに、昨日は純平をどうにかしてあげたくて必死だった。
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