【完結】bitter step!
上手く作れるかどうか。

今大切なのは、それだけだ。


参加することに意義がある――とは思っていても、ボクにだって意地がある。


「集中、集中」

まじないのように唱えたボクの言葉を、母がクスリと笑った。


ボクの作業を最後まで見守ることをはじめから決めていたのか、母はダイニングの椅子をカウンターに向けて座りじっと見つめている。

ボクは気にしない。
びっしり美紗の文字が詰まったピンク色のレシピに端から端までもう一度目を通し、練習したままに、教わった通り正確に、ゆっくりと作業を開始した。
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