【完結】bitter step!
隣の少女が、戸惑ったようにボクと彼の顔を交互に見ている。
……このまま黙っているワケにも、いかない、か。


「あの……そういうのは、本人の目を見て言った方が」

そう、隣の少女を指した。
途端、一瞬息を飲んだ彼の顔が、悲しそうに少しだけ歪む。


「君に、言ってるんだ」


――君、というのは、どうやら本当にボクのことのようだった。


ボクが言葉を失っている間に、少女は黙って席を立った。
その静かな所作には音ひとつ立たない。

グラウンドの喧騒とホイッスルが聞こえた。
ああ、誰かゴールを決めたのかな、て、頭の片隅に男友達の顔が浮かんで、ゆっくり消えていった。


ギリギリのところで保ってきたバランスが、その時、音を立てて崩れた気がした――。
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