【完結】bitter step!
「……あのさ」


長い沈黙を破った純平は、だけど、やはりそれ以上しゃべらなかった。
ボクに何が言えるかと聞かれたら、やっぱり、何も言えないのだけれど。


椅子の背にかけていたコートのポケットに、そっと手を入れる。
そんな立場じゃないと分かっていても――、約束、したから。


「あげる」


短くそれだけ言って、クマを純平に放った。
空中でそれをキャッチした彼の目が少しだけ見開かれ、微かに、ほんの微かに表情が戻った。
< 418 / 707 >

この作品をシェア

pagetop