【完結】bitter step!
再び携帯が震える。
今度は間違いなく、ボクの携帯だった。

その微かな振動音を純平も捉えたらしく、伸びかけの手がビクッと反応して宙で止まる。


その時になって不意にジンとした痛みを下唇に感じ、さっき切ったのだとやっと気付いた。
親指で痛む場所を拭うと、うっすらと血が付く。

純平は、コレを気にして手を伸ばしかけてたのか。


「なお」

「……ん」

何を話せば良いのだろう。
そんな風に後悔した顔をされたら。


「ワリ……」

「別に平気だよ、コレくらい」

親指に着いた血を舐めながら、そう言った。


彼が謝ったのは、唇の怪我のコトじゃない。
それくらい分かっていたけど。


――謝ってほしく、なかった。
< 426 / 707 >

この作品をシェア

pagetop